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おばあちゃんの台所 素敵に歳を重ねた女性の笑顔って、とてもあたたか。ぽかぽかとした陽だまりのような、おだやかな優しさに満ちています。そんな魅力いっぱいの“おばあちゃん”のもとをたずねて、自慢の手料理を教えていただくことになりました。
第9回 心優しいオモニ(お母さん)の味・・・韓国料理
韓流ブームがすっかり定着し、韓国の食文化への親近感がどんどん高まっている最近の日本。このコーナーも時流の波に乗り(!?)、韓国料理の達人・清水麻未さんにご登場いただくことになりました。お母様の故郷である韓国と日本を行き来し、強く明るく生きてきた麻未さん。しかも、かつて切り盛りしていた食事処の店名が「おばちゃんの台所」だとは、驚くほどステキなご縁ですよね! 波瀾万丈なお話とともに、実は手軽に作れてしまう韓国家庭料理を教えていただきました。

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1)「この集合住宅では、ひとり暮らしの人は室内犬を飼ってもいいというルールがあって。そのかわり、ちゃんと管理しないといけませんね」。麻未さんは、ミニチュアダックスの美美(ミミ)ちゃんと毎朝散歩に出かけるのが日課です。2)毎日朝4時に起床してテレビをつけるという麻未さん。ケーブルテレビで韓国ドラマを楽しむことも多いそう。3)韓国で覚えた料理を生かして、数年前まで近所の駅前で食事処を営んでいました。4)台所に立つ麻未さんに、美美ちゃんが何かおねだり。かなりおてんばな女の子です。5)ボリュームたっぷりで満足感の高い韓国風の献立。実は野菜が中心だからとてもヘルシーです。
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言葉が一切通じない母の故郷で踏んばった若い頃
 北海道室蘭市に清水麻未さんが生まれたのは昭和3年(1928年)。日本人の父と韓国人の母、そして6人きょうだいでにぎやかに暮らしていましたが、麻未さんが17歳の時に父が病で他界。麻未さんは母と二人で韓国へ渡ります。「『親戚がいる』と言う母についていったのに、誰にも会えなくて。当時の私は韓国語が全然わからなかったから、不安でたまりませんでしたね」。
 生きるためには仕事を探さなければならず、就職試験も突破しなければなりません。麻未さんは寝る時間を惜しんで独学で猛勉強をしました。そしてなんとか事務の仕事を見つけますが、就職試験までに韓国語をマスターするなど無理な話。“日本語なら問題も解けるのに……”と、もどかしい思いにかられた試験の最中、麻未さんは突然ある意外な行動に出ます。答案用紙を裏返し、白紙に日本語を書きつづったのです。日本から来た自分、今どんなに切実に仕事を探しているのか、そして“韓国語は必ず後でマスターします”という決意表明。「私にできることはそれしかなかったから、本当に必死でとっさに書いて……」。
 結果は見事合格! 言葉は通じなくても人の気持ちは伝えることができるのだと実感した出来事でした。後に転職した旅行会社では、日韓の言葉を使って、日本から来る旅行客の案内役などで活躍しました。


つらい日々を乗り越え
今は気ままな暮らしをエンジョイ
 20歳をすぎたころ、韓国軍人の男性と結婚しますが、二人とも仕事が忙しく徐々に別居状態に。離婚し日本に戻った40代の麻未さんを待っていたのは母の死、そしてその後に直面した自らのガンでした。「手術して子宮と卵巣を摘出して。母を亡くした後だったからキツかったわねぇ。でも、手術後はすっかり元気になりましたよ」。
 日本では韓国語の通訳などとして活躍、東京・下高井戸に友人と共に食事処を開こうという話になったのは60歳を過ぎた頃でした。ところが準備期間にまたしてもトラブル発生。共同経営者のはずだった友人が、開店前に資金を持って姿を消したのです。「私ってすぐ人を信用しちゃう。そういう詐欺まがいのことには何度か遭いましたね」。
 それでもメゲてはいられません。韓国で覚えた料理は自分の生き甲斐にもなると、再度スタッフを募集し、1995年に「おばちゃんの台所」を開店させました。韓国料理といえばキムチと焼肉しか知られていなかった頃、チヂミとチゲ鍋が好評を博し、常連客でにぎわう人気店に。数年後、地上げの波に遭い残念ながら閉店しますが、「今でも街を歩くと、若い子たちに『おばちゃんの料理、また食べたいよ!』って声かけられるの。それがうれしくて、短い間でも店をやってよかったなぁと思います」とポジティブな麻未さんです。
 今は愛犬と一緒におだやかに暮らす日々。家族はいませんが、今も交流があるかつての常連客たちは息子や娘のような存在で、ときには悩みの相談に乗ることもあるそう。あらゆる逆境に打ち勝ってきたオモニ(母)・麻未さんの言葉は、若者たちの心にずっしりと響いていることでしょう。
お店の看板メニューだった
特製チゲ鍋
白身魚でだしをとって、たっぷりの野菜をキムチをコチュジャンと一味唐辛子入りのスープで煮込むチゲ鍋。「韓国では定番の鍋料理で、うちの店でも一番人気だったんです。冬はもちろんだけど、スタミナ満点で元気が出るって暑い夏にも大人気で。ご飯と一緒に食べるお客さんで、お店が満員の日もよくあったわね。野菜はなんでもたくさん入れたほうが旨みが出ておいしいし、白身魚の代わりにお好みで豚肉やイカ、海老を使ってもいいわね。自由にアレンジできるのもチゲの魅力なんですよ」。
チゲ鍋 チゲ鍋
構成/松田優子 撮影/堀智明 取材・文/水野成美、小手森真弓
麻未さんが伝授するレシピ はこちら



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