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おばあちゃんの台所 素敵に歳を重ねた女性の笑顔って、とてもあたたか。ぽかぽかとした陽だまりのような、おだやかな優しさに満ちています。そんな魅力いっぱいの“おばあちゃん”のもとをたずねて、自慢の手料理を教えていただくことになりました。
第7回 東京・巣鴨で教わる、春野菜と山菜料理
住宅街をのんびり走る都電荒川線に乗り、JR大塚駅から一つめの巣鴨新田。梅澤富子さんは、この街にひとりで暮らしています。岩手から上京して50年以上になるという富子さんは、衣・食・住すべてにさりげなくおしゃれを取り入れて毎日を楽しんでいる素敵な女性。故郷の香りを感じる素朴な素材を使い、盛り付けには都会的なセンスが光る富子さん流の春メニューを、さぁご堪能ください。

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1)都電荒川線の駅は住まいから歩いて1分。バス感覚で利用できる都電は、富子さんにとってもありがたい「足」です。2)パッチワークが趣味の富子さん。台所や居間には手作りのマットが敷いてありました。3)煮物にほどよく味をしみこませるには、おとしブタが必需品。「このフタは上に開いた小さな穴からアクが浮いてきて取りのぞけるスグレモノなのよ!」と、楽しそうに教えてくださいました。4)埼玉県に住んでいる姪の栄子さんとは姉妹のような間柄。この日も一緒におはぎを作ってくれました。5)プロの料理屋さんのように華やかな春の献立。器と盛り付けのセンスもお見事です!
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15歳で上京、住み込みで洋菓子店に


 岩手県盛岡市の郊外に住む平凡なサラリーマン家庭に、梅澤富子さんが生まれたのは昭和9年(1934年)。5人きょうだいの3番めとして育ち、中学を卒業後すぐに集団就職で上京しました。杉並の洋菓子店に住み込みで勤め、店の仕事と家事全般をまかされます。
 当時の洋菓子と言えば、今よりもずっと贅沢な食べ物。高級住宅街にあった店には、品のいいマダムたちがケーキを買いに来ました。「私は体が弱く、忙しくてつらい部分もありました。でも、礼儀をしっかり身につけられたのはありがたかったわね」。富子さんの都会的で上品なセンスは、この頃身についたのかもしれません。
 28歳の時、8歳年上の男性とお見合い結婚。製本業の夫はとても忙しい人でした。「2〜3日帰れないなんてこと、よくありましたよ。それに夫はぜんそく持ちだったから、家では栄養のあるものを食べてほしいと思って、料理も自分なりに考えて工夫しました」。
 結婚後、富子さんは洋菓子店に卸す玉子の加工会社で働きます。「毎日朝から晩まで、何百個も玉子を割って分量を測って。もう見たくないというほど、玉子を大嫌いになりましたっけ(笑)」。そう笑いつつも、定年の60歳まで勤めあげた責任感の強さはさすがです。


趣味を楽しみ、幼な子に癒される日々
 子どもはなく、退職後は夫婦二人で静かに過ごしていた富子さんに、厳しい試練がやってきます。2001年秋に突然夫が倒れ、73歳で帰らぬ人となってしまったのです。「私が緑内障の手術で1週間の予定で入院した留守中でした。夫が心筋こうそくで倒れて病院に運ばれたって。私は入院を3日で切り上げて駆けつけたんですが……あっという間で」。ぼう然とする富子さん。それでも親戚や友人に助けられ、なんとか葬儀を済ませました。
 あれから3年。今住んでいるマンションは、夫の晩年を一緒に過ごした住まいです。「あまり外に出かける人でもなかったけど、ときどきは浅草に出かけたり近所を散歩したり。二人でのんびり過ごした思い出もたくさんありますよ」。住まいから歩いて約20分の巣鴨地蔵尊が、富子さんお気に入りの散歩コース。かつて夫と歩いた道を、ひとりでのんびり歩くことにも少しずつ慣れてきました。
 緑内障を克服した富子さんは手芸が大好き。日暮里の問屋街で安く手に入れた布地で、パッチワークを楽しんだり、袋物を作ったり。編物も得意で、昨年生まれた姪の栄子さんのお孫さんには、ベビーウエアを編んで贈ったそう。「今いちばんの楽しみはその子の成長だわねぇ」と、赤ちゃんの写真に目を細め、満面の笑顔でうれしそうに話してくれました。
 センスのよい趣味を楽しみ、適度な距離感で周りの人たちと支え合う。富子さんの生き方に、自立した女性の理想像を見た気がしました。
50年がかりで
母の味に近づいた
「おはぎ」
「私が小さな頃はお米の少ない時代でね。“くず米”と呼ばれる米の粉を使って、母がよくお餅やおだんごを作ってくれました。一番のごちそうがおはぎ。祝い事や人の集まる日には、必ずおはぎを食べたものです。アンコも手作りで、1回煮立たせたあずきを一晩寝かせてアクを流し、砂糖を加えてさらに1〜2時間練りあげる。ちょうどいい練り具合にするのが本当に難しいの。最近やっと母みたいなアンコが作れるようになりました。50年がかりよね(笑)」。
おはぎ おはぎ
撮影協力〈敬称略〉/小島栄子
構成/松田優子
撮影/小島 昇
取材・文/水野成美
富子さんが伝授するレシピ はこちら



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