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おばあちゃんの台所 素敵に歳を重ねた女性の笑顔って、とてもあたたか。ぽかぽかとした陽だまりのような、おだやかな優しさに満ちています。そんな魅力いっぱいの“おばあちゃん”のもとをたずねて、自慢の手料理を教えていただくことになりました。
第5回 たっぷりの野菜とリンゴを生かしたオリジナル献立
日本三大瀑布のひとつ「袋田の滝」や温泉で有名な山あいの里、茨城県奥久慈郡大子町はリンゴの産地としても知られるのどかな土地。その大子町に、毎年秋のリンゴ狩りシーズンにジャム作りを体験できる、クチコミで大人気の観光リンゴ園があります。そこで講師もつとめているのが、73歳のジャム作り名人・仲野みち子さん。今回は特別にお願いして、ジャムだけでなく、とっておきの手料理をたくさん教えていただきました。もちろん、リンゴやジャムを上手に生かしたオリジナルメニューも登場します。

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1)JR水郡線の常陸大子駅から車で約10分。リンゴ園を見下ろす高台に立つ重厚な造りの母屋。リンゴ狩りやジャム作り体験が楽しめる観光農園「アップルナカノ」をご家族で経営。2)月に2回温泉旅行に行くことも。「出かける時はいつも、文句を言わず送り出してくれる家族に心から感謝しています」。94歳になるお母様、74歳のだんな様もご健在。 3)地元の「味(あじ)研究会」に所属するみち子さんのオリジナル鍋メニュー。最近はアップルパイ作りにも凝り、リンゴを生かした多彩なメニューを考え出したいと意気込んでいます。4)家庭菜園で育った新鮮な野菜で作る料理がお得意。5)自家製ゆずジャムに味噌を混ぜた「ゆず味噌」がけのふろふき大根、こんにゃく入りきんぴらごぼうも自慢の逸品。
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タバコ農家から転向、奥久慈リンゴのさきがけに


 みち子さんが茨城県・奥久慈のこんにゃく農家に生まれたのは昭和6年。父や兄たちが相次いで出征、女性と年配者だけが残る戦時中、しっかり者のみち子さんは14歳から台所を切り盛りしました。22歳で地元の男性と結婚しますが、婚家のタバコ農家では毎日が大変な重労働。第二子を出産後、みち子さんは結核にかかってしまいました。
 3年間の療養所生活を経て帰宅、一家は彼女の負担を減らすために、タバコ栽培をやめてリンゴ農家に転向しました。当時の奥久慈は稲やタバコの栽培が主流。苗を植えても実が成るまでに10年かかるリンゴへの転向は勇気の要る決断でしたが、健康には代えられません。「当時は今のように観光農園はなく、リンゴをトラックに積んで遠くまで売りに出かけていました。モミガラを詰める発送作業も大変でね。それでもタバコよりはラクでしたよ」。今でこそリンゴの産地として知られる奥久慈ですが、この地でリンゴをいち早く育てていたのが、みち子さんの農園だったのです。


幾つもの苦難に勝ち、実り多き人生を謳歌
 みち子さんの試練は続きます。40代後半に子宮ガンと診断され子宮と卵巣を摘出、さらに50代後半には胆のうを摘出。その都度体調不良に悩まされましたが、「とにかく、じっとしていられない性格で」回復後すぐに仕事に没頭、体を動かしているうちにいつの間にか病気のことを忘れ……。その繰り返しが、みち子さんの心身を強くしていったようです。「あっという間に50年が過ぎたわねぇ……」。
 73歳の今でも、かつて大病をしたとは思えないほど休みなく働きます。自宅用の家庭菜園と花壇の世話、夏は梅の加工、リンゴ狩り客の対応やジャム作り、そしてリンゴの発送作業。その忙しい合間を縫って、趣味の旅行や大正琴、ドライフラワー作りも楽しんでいるそう。「誘っていただけるうちが華と思って、どんどん遊びに出かけるようにしています。体調なんか気にしなくてすむし本当に楽しいわ(笑)」。
 冬には雄大な滝さえも白く凍る厳寒の奥久慈。この地で寒さを乗り越え甘く真っ赤に実るリンゴのように、多くの苦しみを乗り越えたみち子さんの“今”は、笑顔が満開です。
クチコミで大人気の
ホームメイドジャム
「地元の人たちが集まって『奥久慈のリンゴで何かおいしいものを考え出そう』ということになって、私が提案したのがこの手作りジャム。リンゴと砂糖だけで作る、無添加・果肉100%の味が好評で、商品化されて農産物直売所や道の駅で売られることになったんです。リンゴのほかにマーマレードやゆず、カリンも作ってね。ラベルに私の名前と連絡先が書いてあって、よく追加注文をいただくんですよ。『作り方を教えてください』という声も次々といただいたので、4年前にリンゴ園の中に厨房施設を作り、体験ジャム作りも始めました。70歳で講師になるとは自分でも思わなかったわ(笑)」。
手作りジャム 手作りジャム
取材協力/「アップルナカノ」
茨城県久慈郡大子町淺川3378 
電話02957-2-1579
※みち子さん手作りジャムの通販あり。リンゴ狩り・リンゴジャム作りは9〜11月に実施。
構成/松田優子 撮影/神田正人 取材・文/水野成美
みち子さんが伝授するレシピ はこちら



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