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おばあちゃんの台所 素敵に歳を重ねた女性の笑顔って、とてもあたたか。ぽかぽかとした陽だまりのような、おだやかな優しさに満ちています。そんな魅力いっぱいの“おばあちゃん”のもとをたずねて、自慢の手料理を教えていただくことになりました。
第2回 南アルプスのふもと・鰍沢に伝わる素朴な味
南アルプス源氏山のふもと、山梨県巨摩郡鰍沢(かじかざわ)町は、湯の里としても知られる山あいの静かな町。 その一角、大柳川渓谷ぞいの十谷地区にある「つくたべかん」は、地元のおばあちゃんたちが切り盛りする、地域密着型グルメ体験施設です。深沢小夜子さんは、この厨房に立って手作りの郷土料理をふるまっている元気な女性。十谷伝統の味・みみの作り方や、苦労の後に手に入れた幸せのお話など、聞きごたえたっぷりです。

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1)土日や祝日には席待ちの列もできる「つくたべかん」。ロビーには昔ながらの農具や囲炉裏が配されています。2)笑顔がチャーミングな小夜子さん。体験料理教室では講師をつとめることもあります。3)鰍沢風ほうとう「みみ」を主役にした冬の献立。肉や魚はほとんど使っていないのに、ボリュームたっぷりの大満足メニュー。4)小学校の頃から自分で作ってきた鰍沢風ほうとう「みみ」。みそ味で季節の野菜をたっぷり煮込む郷土料理です。5)「普段うちで作る料理と同じ、量をたくさん作るだけ。苦労もないし毎日本当に楽しいんです」と小夜子さん。
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母を手伝い10歳から台所に立った少女時代


「生まれてからずっとこの町にいるんですよ」と、明るさ満開の笑顔で語る75歳の深沢小夜子さん。80歳になるご主人は、炊事や洗濯などの家事もすすんでなさるという理想の旦那様です。お元気で夫婦二人暮らし、うらやましい限りですが「結婚前はいろいろと大変で。結婚してからはホントに人生が好転して、今も恵まれているんだよねぇ」と振り返る通り、大きな悲しみと苦労を乗り越えた半生でした。
 7人きょうだいの末っ子である小夜子さんが生まれる直前に、病気で父が他界。気丈でがんばり屋の母に育てられ、幼い頃から家事を手伝いました。「10歳頃から料理を教わり、12歳の頃には家族の食事をまかされていました。いつも母や兄にほめてもらえるのがうれしかったものよ」。
 国民学校卒業後、18歳から畑作や養蚕を手がける家業の農業に従事。ところが7人もいたきょうだいのうち、男性5人は戦地で命を落とし、女性1人も病気で亡くなってしまいます。戦中戦後の大変な時代を、母と娘は二人で力を合わせて生き抜きました。「若い頃は他所に出たいとも思ったけど……母ひとりをおいて遠くに住むことはできなかったからねぇ」。


写真左にあるちりとりのような形をした農具が、「みみ」の語源である「箕(み)」。


自分の料理が故郷ゆかりの人たちとの絆に
  26歳で地元の男性と結婚。嫁ぎ先の農家でも養蚕や畑仕事に精を出し、家事もテキパキ切り盛りしました。二人の娘が家庭を持ち、苦労人だった母も90歳過ぎまで元気に過ごして、三世代同居を7年間続けたことが小夜子さんの自慢です。「母は亡くなったけど、今は孫娘も結婚して、娘夫婦ともども隣町にいるんですよ。また三世代が揃ってうれしいよねぇ」。
 「つくたべかん」では97年の開館時からスタッフとなり、週5日の勤務。地の物をふんだんに使った田舎料理を作ります。町を出た人々も里帰りの折にたずねてくるから、30年ぶりの旧友との再会という、うれしい出来事もありました。「私の料理が故郷の人たちとの絆になっているのかもしれないって、ますます張り合いが出るのよ」。忙しい時には小走りで、パワフルに働く小夜子さんは、頼もしい肝っ玉母さん。それはきっと、料理と人生を教わったお母様から自然と受け継がれた心意気なのでしょう。
故郷のみんなと食べた
福を願って味わう
鰍沢のごちそう「みみ」
  山梨名物のほうとうと同じ生地を、ここ鰍沢では四角く切って折るんです。形が農具の「箕(み・穀類をふるう農具)」に似ているでしょ。そこで、福をすくいとるという意味で「福箕(ふくみ)」となり、さらに転じて「みみ」と呼ばれるようになったとか。母に教わって小さい頃から作っているけど、粉と水の分量や練り方で固さが変わるから難しくて。初めてうまく出来た時はうれしかった! 元旦の朝に「新年の福をすくいとる」と縁起をかついだり、いつも人が集まるお祝いごとには欠かせない、伝統のごちそうです。
みみ みみ
取材協力/「つくたべかん」
電0556-20-2020
営業時間10:00〜17:00、木休(祝日は営業)
http://www.town.kajikazawa.yamanashi.jp/
tsukutabe_idx.html

構成/松田優子 撮影/神田正人 
取材・文/水野成美
小夜子さんが伝授するレシピ はこちら



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