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おばあちゃんの台所 素敵に歳を重ねた女性の笑顔って、とてもあたたか。ぽかぽかとした陽だまりのような、おだやかな優しさに満ちています。そんな魅力いっぱいの“おばあちゃん”のもとをたずねて、自慢の手料理を教えていただくことになりました。
第1回 東京・赤坂で出逢った南三陸の味
記念すべき第1回は、赤坂の郷土料理店で活躍する岸浪智恵子さん。
故郷・南三陸の郷土料理と激動の人生史について語っていただきましょう。

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1)娘さんと一緒に切り盛りする赤坂の郷土料理店「岸浪漫」の厨房。2)和服に割烹着がよくお似合い。玉三郎や橋之助の歌舞伎、松平健の時代劇、モンローやヘップバーンの映画が好きというハイカラな趣味も。3)すいとんは幼い頃から慣れ親しんだ献立。野菜がたっぷり入った具だくさんの田舎料理です。4)「大好きな料理を作って毎日を楽しく過ごすのが元気のもとなの」と智恵子さん。5)智恵子さんオススメの秋の献立は、故郷・北上町から直送の海の幸がたっぷり。
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大好きな料理とともに、夢中で歩んできた70余年


「いらっしゃーい、おばんです」  宮城県の素朴なお国言葉で出迎えてくれる77歳の智恵子さん。ツヤツヤと光る素肌、ほんのり紅い頬は「おばあちゃん」と呼ぶのをためらうほど、若々しく見えます。
 智恵子さんの出身地は、仙台から1時間ほど電車で揺られる宮城県桃生郡北上町。南三陸の海が広がるのどかな港町で、6人きょうだいの5番目として生まれました。女学校を卒業後17歳で上京、看護婦、事務員などを経て、職場で知り合った年上の男性と25歳で結婚。東京都北区で学生の下宿屋を夫婦で始めたのが、「料理」を仕事にした最初のきっかけです。
「自己流だけど、昔から自分の料理をみなさんに食べてもらうのが大好きでね。学生さんに朝晩の食事を出すのが楽しみだったわ」。しかし30歳の頃、長女の出産を契機にいったん下宿屋をたたむことに。さらに次女も出産し、しばらくは育児に専念しましたが、その後はまた割烹で働くようになりました。「やっぱり料理が好きだったからね。誰も教えてくれなかったけど、板前さんを見て一生懸命ワザを盗んだのよ(笑)」


“クヨクヨと思い悩まないタチなの。気楽でいいわよー”
 割烹での働きぶりが認められ、40代には小料理屋の女将をまかされるようになります。さらに、50代半ば頃からは老人ホームの介護ヘルパーとして家事全般も担当、57歳で夫を亡くした悲しみも乗り越えました。当時は55歳が定年だったヘルパーを、年齢を伏せて70歳までつとめたというから驚きです。そして2000年春、長女の正枝さんが赤坂に郷土料理店を出すことが決定。智恵子さんも腕をふるうことになり、以来5年間、ほぼ毎日お店に立ってきました。
 「何事もクヨクヨと思い悩まない性格なんです。お客様にもいつも言うのよ、『たまにはバカになってごらん、気楽でいいわよ!』って(笑)」。陽気で前向き、料理上手な働き者。チャーミングな智恵子さんに、故郷の母を重ね合わせる人も多いようです。ほら、今夜も智恵子さんを慕ってお客様が集まってきました。
故郷のみんなと食べた
仙台風すいとん「芋煮はっと」
 神主をしている実家に、近所の人がよく来ていましてね。食糧不足の時代でしたが、母は芋煮はっとをたくさん作っては、畑仕事から帰ってくる人たちに「寄っていきませんか」と声をかけて。みんな野良着のままおいしそうに食べてドブロクも呑んで。次の日はうちの薪割りを手伝いにきてくれましたよ。貧乏な時代でしたけど、ご近所じゅうの人と仲良しで楽しかったわ。私が人に料理をふるまうのが好きなのは、あの頃の母を見ているからなんでしょうね。
芋煮はっと 芋煮はっと
取材協力/「仙台とろ牛タン三陸珍味 地酒 岸浪漫」
電03-3589-6002
構成/松田優子 撮影/小川玲子 取材・文/水野成美
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