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坂本美雨のPhotoエッセイ
TOKYO 徒然草

アーティスト坂本美雨が、東京、ニューヨーク、
世界のさまざまな空の下で感じ考えたことを、徒然なるままに綴ります。

第5回 恋に落ちてしまいました。…人ではなく、場所と。


こんな穏やかな夕方は、コーヒーじゃなくて、ハーブティー。急に昔の同級生のフルネームを思い出したりする夕方。先日『nikissimo』でいただいたハーブティーをいれてみる。カモミール、レモングラス、ローズヒップ…。オリジナルブレンドのハーブがポットの中でまざると、一分、二分…だんだんと夕焼けのような朱色が染みだしてくる。静けさに満たされる。

『nikissimo』とは那須のホテルリゾート『二期倶楽部』がプロデュースした、この春、東京・表参道にオープンしたばかりのアロマ・トリートメント・サロン。去年の秋、ある取材で二期倶楽部を訪れる機会があった。そこで、私は恋に落ちてしまった。人ではなく、場所と恋に落ちることってあるのだ、と知りました。
紅いハーブティー越しにひろがる、真っ赤な夕焼け…ポットの中にサバンナがひろがっているみたい。



日本が一番美しいこの季節。先走っているつぼみにシンパシーを感じる。今年は、はじめての京都に行ってみたい…。
那須塩原駅からバスで30分ほど走ったところにある、緑いっぱいの広大な土地。少し湿った濃い緑のにおい。渓谷を流れる水の音と、どっしりと歴史を感じさせる大谷石が迎えてくれる。メインロビーで揺れる暖炉の灯り。ウェルカム・ドリンクのハーブティーをいただきながら、携帯の電源を落とす。その下には、光溢れるガラス張りのレストラン。外に5cmほどの水が張ってあり、自然の情景が映り込む粋な仕掛けも。紅葉の時期には真っ赤な葉がひらひらと舞い降りて、水面を飾る。このメインロビーからゲストルームへは、一旦外に出なくてはならない。ゲストルームは、常連客たちから親しまれている。

本館と、コンラン卿がデザインし新しく建てられた東館がある。本館から東館へは約10分ほど歩かなくてはならない。また、温泉や露天風呂、テニスコート、菜園、スパ&エステなどの施設も、ゲストルームからは散歩コースを歩いて行く構造になっている。もちろん雨や雪が降る日も。その不便さこそが、ここのテーマの一つなのだ。


何もかもが便利で、不必要な動きは省略されていく社会にあって、このリゾートではその不便さや余計にかかる時間も贅沢の一つ。その”余計”を満喫すること…。部屋に置いてあるのは、コーヒーメーカーではなく、手挽きのコーヒーミルだ。そのひと手間が、人を豊かにしてくれる。どの部屋も、大きな窓から自然がそのまま溶け込んでくる。部屋にいながらにして、自然の一部になっている。

そんな環境や施設やデザインはもちろん、私がなによりも感動したのは、その過剰ではない“もてなし”の質。サービスは、クァンティティ−(量)ではなくクオリティー(質)なのだと、こんなに説得力を感じた場所はない。ゲストルームが母屋から離れているため、心地の良い孤独を感じることができる。必要以上には関与してこないが必要な時には暖かく答えてくれる。マニュアルを感じさせない人間的な受け答えで、些細なことでもロボットではなく人間と接した、と感じる。100人居れば100通りのサービスがあり、その人が必要としているサービスを見極めなくてはならない。マニュアルは通じない。だからこそ、ふとした瞬間の気遣いが、心に染みてくる。『二期倶楽部』は私の“憩いの場所”…いや、年相応に正直に言うと、“憩いの場所にしたい場所”になった。
ニューヨーク SOHOのTHOMPSON st.にある、お友達のお店『MAKIE』から来た、ハンドメイドのモンキーたち。いつも部屋の真ん中でゆらゆら、微笑みながらゆらゆら、二人で、ゆらゆら。


コレクションしているわけではないのに、いつのまにか集まってしまった花のブローチたち。ひらひら、わさわさ。

さてその二期倶楽部が作った『nikissimo』は青山の「ラ・ポルト」5階にある。本家二期倶楽部の描写に力が入りすぎてスペースが足りなくなってしまったが、ほどよい距離感が生む心地よさ、身体だけではない二期倶楽部による心のマッサージは、東京の中心にあってもしっかりと感じることができた。


『二期倶楽部』
http://www.nikiclub.jp/




『Petra Haden and Bill Frisell』/ペトラ・ヘイデン&ビル・フリゼール
『Hotel』/モービー 坂本美雨の今月の一枚
『Petra Haden and Bill Frisell』/ペトラ・ヘイデン&ビル・フリゼール
『Hotel』/モービー

気持ちイイ2枚。美しい声を持つPetra HadenがBill Frisellと組んで作った、エバーグリーンな曲ばかりの『Petra Haden and Bill Frisell』。そして大好きなMobyの新譜『Hotel』。2枚組に入っているアンビエントアルバムがヘビーローテーションです。
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プロフィール
80年生まれ。9歳の時、家族でニューヨークに移住。97年1月、Ryuichi Sakamoto featuring Sister M名義でデビ ュー。99年、本名で本格的に音楽活動を開始し、映画「鉄道員」の主題歌、そしてフルアルバム「DAWN PINK」をリリース。

現在、音楽活動に加え、連載や映画評などの執筆、翻訳、J-waveのナビゲーター、TVのナレーション、ジュエリー・ブランド「aquadrops」のプロデュースなど創作の幅を拡げ、日本/NYを行き来しながら猫と一緒に音楽漬けの生活をしている。

オフィシャルサイトでも、文章や写真を日々更新しています! http://www.miuskmt.com/

坂本美雨さんへのメッセージをお待ちしています!



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